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「・・は?」
素でそんな声が出た。我が生み出した?降りてきた?何言ってんだこの人?
「すんません。もう少し詳しく・・・」
言ってから「しまった」と思った。さっきの台詞は電波の気配がする。もしかしたら深入りしない方がいいのか・・
しかし、彼女はすでに話し始めていた。
「実はな、我はこの時代の人間ではない。遥か昔に死んだ僧なのじゃ。」
「はあ・・・」
「ただの僧ではないぞ。聞いて驚け。この連念は、真言宗の密教、『真言立川流』の開祖なのじゃ!」
「ああ、立川流ですか。」
『なのじゃ』のところで連念は大げさにどや顔をし、その瞬間大きな胸がたゆんっと揺れた。それが見えてしまったついでに少し観察してみる。顔は優しげな美人で、髪は黒く長く、心なしか艶やかだった。
「本当ならば死ねば輪廻の輪に加わるはずであったが・・ちと事情があってのう。人ならざる肉体をもってこの世に降臨したのじゃ。」
「・・はあ・・・」
「そこで幸運にもお主に会った。色々と聞きたいことが・・・って、ちょっと待て!!」
俺は『色々と』の辺りですでに逃げ出していた。あの人は完全な電波だ。なまじ美人なだけに引き込まれるとやばい予感がする。
「こら!人の話は最後まで聞かぬか!!」
「宗教勧誘その他危険な話は別です!!」
叫びながら必死で走る。世の中何もかもに真摯な態度でいられるかってーの。
・・・家が見えてくるころになって、俺はようやく速度を緩めた。追いかける足音はいつの間にか、消えていた。
「たく、ひどい目にあった・・」
そう言って、カギを取り出しドアを開けようとした時。
「ほう、そこがお主の家か。」
「ふわ!!?」
驚いて振り返る。それは紛れもなく連念の声だった。それも、なんと、頭上から聞こえたのだ。
「・・・・んなばかな・・」
「ふふふ、これで我が普通の人間ではないと分かったじゃろう?」
彼女は、浮いていた。地面などない。空の真ん中に。
連念はすたりと俺の目の前に降り立つと、にやりと笑っていった。
「勝手に逃げた罰じゃ。お主の家で休ませろ。」
「え!?」
「浮くのに力を使ったんで、少し疲れたのじゃ。」
「知るか!!」
しゃーない、もう少し付き合うか・・・
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