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「緑茶でよかったですか。」
「うむ。ごくろう。」
連念は居間で正座して待っていた。意外にきれいな座り方だったが、生憎そんなことはどうでもいい。
「しかし人々のすみかも変わったものだな。このジュウタン?とかいうの暖かくて気に入った。」
絨毯の毛を弄って遊ぶ連念に、俺は胡坐をかいて茶をすすりながら、ひと声かける。
「で、何の用で出てきたんです?」
「おお、そうであった。聞きたいのはズバリ、この時代に立川流がどうなっているかじゃ。信徒などはどのくらいの規模じゃ?寺院は?」
「えー・・」
連念はこちらに期待のまなざしをチラチラ向けながら茶をフーフーしている。まいったな。生憎、知っている情報は昼に涼が言ったあれしかない。信徒は・・
「ゼロです。」
「え?」
「一人もいません。」
その途端、連念は固まった。茶の水面を覗き見ても、微かな波一つ立たなかった。すげえ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・帰る。」
「え?」
「世話になった。我は輪廻へ還ろう。」
「いや、ちょ、・・・」
連念は茶をことりと置くと、しょんぼりとして立ち上がった。
「短い付き合いであったが、楽しかったぞ・・・」
「待て!待って!」
完全に一人でお別れムードの連念を引き留める。流石にこんな反応は気まずい。
「わかりましたよ。もうちょっと調べてみますから。」
そういって、俺は踵を返して自分の部屋から何かを持ってくる。
「何じゃ?その黒い板は?」
「PCです。って、言っても分かんないか・・・色んなことが調べられるんですよ。」
ディスプレイを開き、『真言立川流』と検索する。意外にたくさんヒットした。
「ウィ○ペディアでいいか・・」
俺は記事を読み進める。連念は横で興味深そうに見つめていた。
「ふーん・・・」
俺は一通り読み終わると、連念に向き直った。
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