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とりあえず俺が入手した情報を、かいつまんで紹介するとしよう。
真言立川流。
鎌倉時代に仁寛(のちの連念)によって開かれた、密教の一宗派。
経典は理趣経(理趣経)とよばれるもので、荼枳尼天(だきにてん)という仏を拝した。
面倒くさいので色々読み飛ばしたのだが、つまるところ男女が交わることで大日如来とかいう偉い仏と一体になるというのが真髄らしい。涼の奴が『HがOK』とか言ったのもこの事だろう。本来は仏教においての『不邪淫』として戒められているが、密教なんてのはそもそもごく一部の偉い僧たちが受け継ぐ戒律みたいなもので大衆に広めるタイプのものではなく、その中ではいわゆるHが肯定されるのも珍しくないらしい。ただ、そう言うものが書かれた経典などが日本に殆ど伝わらなかったので、現代日本では密教でも否定的な所が多い。
ちなみに、骸骨を使って七年間かけて儀式を行うとかいう『俗説』があるらしいが、かつて弾圧を受けて資料が殆どないので、分からない事だらけだそうだ。
「へー、なんか変わった宗派なんですね。」
「きょ、興味あるのか?」
やはり現在信徒はいないらしい、と伝えた時は落胆していた連念だが、俺の反応にわずかに目に光がともる。
「無くはないですが。」
「そ、そうか!それはありがたい!!」
連念は子供のような顔になって喜んだ。実際のところ帰ってもらいたい気持ちが八割なのだが。
「でも連念さん、「この時代の立川流の様子を見届ける」ってんなら、これ以上大した収穫はないんじゃないですか?」
なんせ具体的な活動をする人間がいないのだ。わざわざ見て回るほどのものが残っているかどうか。それを伝えると、連念はまた悲しそうな顔になった。
「そうじゃな・・この世に余計にとどまるのも、迷惑じゃろうし・・」
「このまま帰ることもできるんですか?」
気の毒な気はするが、本人に用がなく、納得ずくで帰るんならそれに越した事はなかった。無駄に人外の存在にかかわれるほど、俺は懐が広くない。連念だってそんなことをさせる奴には見えなかった。
だが、連念は沈んだ顔のまま、こう呟いた。
「できなくはないが・・弟子たちに、申し訳ない。」
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