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「弟子?」
俺が怪訝な顔をすると連念は頷き、話し出した。
「われはもともと、仁寛といい、時の陛下、後三条天皇の第三皇子、輔仁親王(すけひとしんのう)に仕えた僧であった。幼少から兄に真言宗を学び、高い位にまで上り詰め、不自由ない生活を送っていたが・・」
ウィ○にあった通りだ。加えて、両親はそろって皇族の家柄であり、兄は勝覚といい、当時、鎌倉時代に真言宗系修験道の最大流派、醍醐三宝院流の開基であった。生まれながらにしてとんでもないエリートだったのだ。だが・・
「あの時・・」
「1113年、永久元年でしたね。伊豆に流されたの。」
「!!あ、ああ・・」
俺が言うと、連念は気まずそうに笑った。
「白河天皇、鳥羽天皇ときて、輔仁親王はどんどん皇位から遠ざかっていった。そこで我は、鳥羽天皇を暗殺しようとした・・という事になった。」
「けど、それってでっち上げじゃなかったんですか?」
連念の言った事件は『永久の変』として残っている。しかし、実際は、輔仁側を危険視していた天皇側が、輔仁側の影響力をそごうと企んだのだと言われている。
だが、連念は静かに首を振った。
「昔の話じゃ。我にとって、大事なのはここから。よく聞いておれ。」
「・・・・」
連念はさびしげに笑い、一呼吸おいて話し出した。
「お主の言った通り、我はその咎で伊豆へと流された。連念と名乗ったのはそれからじゃ。そこでも我は真言宗の教えを広めていた。天皇家が監視役を送り込んできたりもしたが・・幸い理解ある者達でな。我はそいつらに三宝院の奥義を託したのじゃ。」
うんうんと頷き、感慨深そうに話す連念。しかし、ここからどうなるかを考えると、俺は何も言えなかった。
「それから・・我は・・」
不意に、連念の表情が暗くなった。
「伊豆葛城山の南東麓の城山(じょうやま)の頂から身を投げ・・死んだ。」
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