第1話 現れた開祖様

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「・・・何故、そんなことを?」 「さあな。世を儚みでもしたか・・よく覚えておらん。」 後悔の念があるのか、蓮念はかすかに唇をかんだ。 「我は弟子と共に歩むことをしなかった・・そのことをずっと気にかけていて・・だから、我と弟子の教えの名残でも見つけねば、帰るに帰れんのだ・・」 「・・・・」 「・・む?なんだか、弟子のためというより、ただの我のわがままだな・・ふふふ・・」 連念は薄く、自虐的に笑った。俺はしばらく、黙っていた。 自身で「わがまま」と認めている以上、この世にとどまる義理も、ましてや俺が関わる理由もない。理屈ではそのはずだ。 しかし・・・ 「連念さん。」 声をかけると、蓮念はきょとんとした目でこちらを見た。語気が自然に強くなったのだろうか。 「もし、もしこの世にとどまるとしたら・・行くとこはあるんですか?」 蓮念は目をぱちくりとさせた。質問の意図をつかみかねているようだ。 「いや、ないが・・・」 やっぱりか。俺は頷き、こういった。 「もし良かったら、ここに泊まりませんか?」 「え?」 蓮念が間の抜けた声を出す。俺は構わず続けた。 「その代り・・さっきも言ったけど、多少興味がわいて・・少しずつでもいいんで、教えてもらえませんか?教えを改めて伝授したら、帰るってのはどうですかね?」 興味がわいた。その言葉が、どこまで本当だったかは分からない。だが、それは水が流れるようにするすると口から出ていた。 「・・よいのか?」 「・・はい。」 すると、連念は打って変ったように笑顔になった。 「そうかそうか!ありがたい!まことにありがたいぞ少年!!」 「は、はあ・・・」 「もうさん付けなぞ要らん。呼び捨てでいい。分かったな?」 「・・分かりましたよ、蓮念。」 まったく、調子のいい奴だ・・・ 「そうじゃ。まだ名前を聞いておらんかった。お主の名は?」 「池沢 信二。」 「信二か。世話になる。」 静かに合掌する蓮念。こちらも合掌で返す。挨拶なんだろうが、やりにくいな・・ 「・・あ。」 そうだ。さっきから気になっていたことがあった。
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