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一度目の交差の後、クルトはフォンを押し返すと、槍を大地に突き立て笑った。
「どうした、まさかその程度で槍が欲しい等と言った訳じゃないだろう?」
「当たり…前ッ!!」
「フッ……甘いな」
瞬間的な加速魔法を使い背後を取って槍を降り下ろすが、クルトは見向きもせずにそれを槍で受け、フォンは再び距離を取らざるを得なかった。
「まだまだ…!!」
「ほぅ…?」
フォンの次の策は魔力で作り出した分身を使った撹乱戦法だった
二つに分かれたフォンは、一目ではどちらが本物かは区別がつかないだろう
だが、クルトは不敵な笑みを崩さない
突っ込んできた二人の内、右のフォンに向けて迷わずに槍を突く
「うわッ!?」
「分身はいい考えだがな、攻撃の際に敵意が剥き出しすぎる、それでは直ぐにバレてしまうぞ」
咄嗟に回避したフォンは、体勢を崩して地面に滑る様に転ける
クルトは、また槍を地に突き刺す
彼は最初にフォンを押し返してから、一度もそこから動いていなかった。
「うぅ……」
「おいおい、もうダウンか?
成長したと思っていたんだがな…買い被りすぎだったか?」
挑発的な父の言葉に、フォンは土を握り締めながら立ち上がり、転けた際に切った頬の血を拭って槍を構えた。
「…………」
キッと睨み付けるフォンに、クルトはニヤリとし、「それでいい」と小さく呟いた。
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