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「では…今度は此方から攻めるぞ」
槍を引き抜いたクルトはそう言うと同時に掻き消える
困惑よりも先にフォンの身体は腕を動かし背中に槍を回す…同時に腕に重い衝撃が走り、思わず前のめりに倒れかけた
「うぅっ…!?」
後ろを見遣ると、降り下ろしていたクルトの槍を何とか防いでいる自分の槍が見え、おおよその予測を立てていた
(加速魔法…!
でも、速さがダンチだ!! 眼で捉えられなかった!)
「やるな…そら、次だ!!」
「ッ!! これは!?」
父の言葉にハッとした時には、既にクルトは行動を開始していた
父の姿が二つに別れて突撃してくる…ここまですれば、フォンにも父が何をしているかが理解できた。
(今度は分身魔法!
親父…俺のやった事をそっくりそのまま返すつもりかよ!?)
内心は焦りながらも、普段から頭を冷静に保つようにしていたお陰か、彼の立ち直りは早かった
(敵意は…どっち…ッ!?)
アドバイスを活かそうと、集中して二人を見ていると、不意にゾクリと背中が粟立つのを感じた
「また…後ろっ!?」
「遅い!!」
なんと二人のクルトはどちらも偽者だった
その証拠に二人はフォンの直前で霞のように消え去り、それよりも一瞬早く全てを理解した彼は、振り向き様にそれを見た
…槍を突き放つ寸前のクルトの姿を。
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