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「合格だよ、文句無しに…な」
「なっ…なんで!?」
「あまり大きな声を出すな、リムスとキーアは寝ているんだからな」
「あっ…ごめん…
でも、どうして?」
テーブルを叩きながら身を乗り出したフォンは、ばつの悪そうな顔で謝るが、それでも何故、という気持ちで一杯だった。
フォンの問いにクロスは笑んでみせると、椅子から立ち上がり服を捲って腹部を露出させた
「ほら、脇腹見てみろ」
「あ……」
そう指差して強調する父の脇腹の部分を見てフォンは驚いた、何故ならそこには痣がくっきりと残っていたのだから。
「最後のあの瞬間、俺はお前の意識を刈り取るつもりだった」
「…………」
「だが、それを見てもお前は諦めなかっただろう?
身体を捻って芯を外して、痛みに堪えて反撃の一撃を突きだした」
淡々と述べるクルト、しかし言葉の端々に嬉しさが滲み出ているのがフォンにはわかった。
「結果お前は俺に一撃喰らわせた訳だ…よくやったな、フォン」
「あっ…」
身を乗り出した父に乱暴に頭を撫でられ、フォンは払い除けようとしたのだが、何故かそれが出来ずに、されるがままになっていた。
「戦いで勝敗を分かつ条件は、実力もそうだが俺は諦めない事だと思う、心から諦めたら本当の負けになるんだ…最後まで諦めるな
今日の戦い、その最後の一撃を放った時の気持ちを忘れるなよ」
(褒め…られた…
やったんだ、俺…親父に一撃喰らわしたんだ!!)
クルトはそう言うが、肝心のフォンは、自分はやったのだと何度も心で繰り返し、話を聞いていたかどうか怪しかった
それほどに嬉しかったのだ。
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