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青年はA国に生きて帰るつもりは初めかなかった。捕まって捕虜になることなど絶対にしない。捕虜になり交渉の材料にでも使われでもしたら、恩返しどころか迷惑をかけてしまう。だから、青年は上官に頼み込んで、自爆できるよう強力な爆弾を持たせてもらうことにした。それを、B国の中枢で自分ごと爆発させるつもりでいた。
青年は地獄行きの片道切符を手に入れたようなモノ。敵地へ死ぬ為にいくなど馬鹿げている。しかし、青年は恐れてなどいなかった。このA国に少しでも恩返し出来るのならば、命など少しも惜しくなかった。もしかしたら、成長する前に病気や飢餓で死んでいたかもしれない。それを思えば、自分の命など。
青年は仲間や上官に見送られながら、単身B国へと侵入した。
そこからが、大変だった。そこは、敵地である信頼できる味方は自分自身でしかない。A国の軍人がB国に侵入したことはすぐに、知れ渡り青年はB国の軍人に追われることになる。それでも、青年は歩みを止めることはなかった。全てが敵なら遠慮などいらない。どんな手段を使ってでも、青年はB国の中枢をひたすら目指した。パスワードを手に入れる為に、中枢を管理している軍人の家族を誘拐して聞き出したこともあった。パスワードを聞いたら聞いたで、誘拐した相手は殺す。A国で行えば、残虐非道、悪魔と罵られたことだろう。B国なら問題ない。悪魔は、この国の連中であって、悪魔に同情をかける必要など少しもない。
青年は追われながらも、あらゆる手を尽くして、ついに辿りついた。B国の中枢ともいえる、メインコンピュータが置かれてある部屋に。ここの機能を破壊してしまえば、もうA国を襲撃することはできない。それどころか、B国は総崩れとなってA国がB国を占領するまでなのだ。
警報は鳴り響き続けていた。ここに至るまで、色々なことをしてきた。もう逃げ場などない。いや、逃げる気など毛頭なかった。最悪、こうなることを青年は覚悟していた。
青年は死を悟ると、自分の身体に巻き付けられた強力な爆弾のスイッチを入れた。
青年は満足だった。どんな形であれ、自分をここまで育ててくれたA国に恩返しをすることができる。きっと、青年の名はA国の歴史に英雄として永遠に刻まれ続けることだろう。
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