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「フツー、先生たちが生徒送ってくれんじゃね?」
「馬鹿言え、先生たちはこれから校内の見回りとか戸締りとか。色々忙しいの」
めんどくさそうにそう言いながら、菅井はすっと近寄って耳元に顔を寄せてくる。
「お前も男なんだから、女の子送ってくくらいしろよ」
からかうように薄っすらと浮かべた笑いが、疎ましかった。
「お願いね、佐久間くん」
麻里子先生からも念を押すようにそう言われると、もう断れない。
チラリと俺に託された女子生徒を見れば、
彼女は何かを諦めたかのように小さくため息を漏らすところだった。
「さよなら、先生」
「おう、また明日な」
「気を付けてね、佐久間くん、桐谷さん」
女子生徒――桐谷が、歩き出す。
俺はそれに着いていくしかなくて、
いや、彼女を送っていくのが既に決定事項で。
「……さよなら」
菅井と肩を並べる麻里子先生を振り返り、彼女に向けてだけ、それを言った。
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