あの時、俺は

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俺と桐谷は、正門から少し離れたところに隠れて、菅井と麻里子先生が出てくるのを待った。 予想通り2人揃って出てくる姿に、ちくりと胸が痛む。 桐谷も同じなのか、 彼女は無言のまま、俺のコートの端を掴んだ。 そのまま歩いて駅の方向へ向かう後ろ姿が小さくなった頃、 「行く?」 声には出さずに目配せすると、険しい表情のまま頷く。 歩き出しても、コートを掴んだ手は離れなかった。 追跡している2人は俺たちに気付きもせずに悠長にカフェに立ち寄り、 そこへ入って行くわけにもいかない俺たちは、近くの自動販売機でホットコーヒーを買う。 「佐久間、ブラック?」 ボタンを押すとほぼ同時、桐谷が驚いた声をあげて、 そこでようやく、コートを掴みっぱなしだった手が離れる。 「……桐谷は? おごったる」 なんとなく。 そうしてやらなきゃいけないような、気がした。
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