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彼女の痛みが分かった。
彼女の気持ちが分かった。
彼女の考えていることが分かった。
彼女の望みが、分かった。
俺はその時、
桐谷千鶴を、理解した。
「……大丈夫?」
「佐久間、こそ」
コートの端を握る彼女の手を、取った時
一瞬怯えたような彼女と、視線が絡んで
握り返してきた彼女の手は
『私も』
そう、言ったようだった。
『私も、分かったよ』
……俺の、望みが。
手を繋いだまま
俺はツリーの反対側へ回る。
視界から、
菅井と麻里子先生を追い出した。
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