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「ずっと……、ずっと、好きでした」
光の国の真ん中で
桐谷千鶴はそう言った。
「……知ってたよ」
「聞かせて」
彼女が誰を見ているのか、俺は知っていた。
「俺も。ずっと、お前を見てた」
俺が誰を見てきたのか、彼女は知っていた。
「うん。――知ってた」
光の国の真ん中で
涙を浮かべて嬉しそうに笑った彼女が
真っ直ぐに俺を見返しながら
誰を見ているのか、知っていた。
「先生」
そう俺を呼ぶ彼女を
「……」
麻里子、とは、どうしても呼べずに
光の国の真ん中で
涙を誤魔化しながら交わした
初めてのキスは
痛くて痛くて
ぎこちなくて
下手くそで
――最低最悪の、思い出。
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