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「ごめん、遅れた!」
勢いよく入口のドアが開いて、飛び込みざま良く通る声で彼女は言った。
「……遅い、桐谷」
俺が言うと、
「佐久間だって遅れたくせに!」
周りが騒ぐ。
が、気にしない。
「桐谷、ここあいてる」
隣をぽんぽんと叩くと
6年ぶりに見る彼女は、一瞬だけ目を見張った。
「久しぶり、佐久間」
言いながら隣に落ち着いた後、
いたずらな笑いを浮かべて耳元に口を寄せる。
「来ないと思ってた、麻里子先生の結婚パーティなんて」
「そっちこそ」
周りに聞こえないよう小声で、俺は返す。
「菅井は今日は来ないのに」
その時、俺は。
あの日止まってしまった何かが、
動き出したのを、確信した。
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