17人が本棚に入れています
本棚に追加
「今から。……仲良くなりたいんだけど」
――全てを見透かしたように、桐谷は笑った。
「奇遇ですね」
あの時、ぼやけて見えなかったものが
見ようとしなかったものが
「私も、そう思ってたとこよ」
――ここに、あの時の光の国のような煌びやかさはないけれど
安さだけが売りの、ただの居酒屋チェーン店だけど
ぎゃあっと大声で騒ぎ立てる周りは、耳を塞ぎたいほどうるさいけれど
今、この時
はっきりと、見えた。
「6年越しって、遅過ぎない?」
「お互い様だろ」
あの時、俺は
ぎこちない初めてのキスを交わした、この子に
――恋に落ちていたんだ。
最初のコメントを投稿しよう!