あの時、俺は

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いつ頃からだったか。 彼女から、目が離せなくなったのは。 彼女の担当教科である英語が、俺は得意じゃなかった。 や、正直に言えば、勉強全般が得意じゃないのだが。 英語はその中でも、群を抜いて酷かった。 俺たちが中学生になったのと同時に教師になったばかりの麻里子先生は、そんな落ちこぼれに対していつも一生懸命で。 いつの間にか。 ――ガキ、だったから。 あの時はまだ、年の差とか教師と生徒という弊害なんて、全く考えられなくて。 補講、個別指導、居残り。 そんな名目で、真剣に1対1で指導をしてくれる彼女と 2人きりになれることが、ただ嬉しかった。 「もう、真剣にやってよね」 「うん、やってるよ先生」 間違いだらけのノートに眉を寄せて頬を膨らませる彼女は、 いつだって、可愛かった。
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