あの時、俺は

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 ◆  「長年の想いが叶って良かったね、先生」 「え……な、長年って!?」 俺が中1の時に23で着任したとして、この人はもう30を超えているはずなのに。 慌てふためく先生は、年取ってもやっぱり可愛い。 初恋の相手に対する、色眼鏡なんだろうか。 「バレてないと思ってた? 先生、あの頃から菅井先生一筋だったよね」 菅井と麻里子は同時期の着任だった。 爽やかな外見で生徒受けが良くて、内実は暑苦しい熱血漢だった菅井が、 公私ともに彼女の支えになっていたのは想像に難くない。 会話に聞き耳を立てていた周囲が、ヒュー! と騒ぎ出す。 麻里子は困ったような照れたような、 ……やっぱり可愛らしい顔で。 真っ赤になって、両手を顔の前で振って否定しようとする。 「そんな、隠さなくても。てか、顔でバレバレだから」 もうっ! と頬を膨らませる彼女が、 あの頃と、リンクする。
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