あの時、俺は

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 ◇ 「もうっ! やっぱりふざけてるんでしょ、佐久間くん」 「ふざけてないって! 真面目にやってる」 雪でも降り出しそうな寒さだった。 実際には、過去十数年、この辺りでこの時期に雪が降った事などないらしいけれど。 明日が終業式、という今日もまた、 俺は先生を捕まえて個人指導を受けている。 頼むよ、このままじゃマジでどこも受かんねーから。 落ちこぼれ受験生のそんな懇願を突っぱねられるほど、彼女は冷たくない。 勉強、という大義名分のもと。 あわよくば。 願わくば。 今日この日だけは―― 12月24日 クリスマスイブ。 今日だけは、俺のモノでいて欲しい。 彼女の視線がどこを見てるか 知っているからこそ口には出せない、 俺の、我が儘。
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