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「かんぱーい!」
三人は無事に仕事を終えたことを祝った。恐れていたことなど何もなかった。それどころか、環境もよく素晴らしい星だ。箱に詰められた土産物もついてきた。
宇宙船はすでに自動操縦に切り替わっていた。三人は地球に着くまでの間、お互いにこれまでの苦労を労いながら酒をかわした。宇宙船内では酒を飲むことは禁止されていたが、今日だけは特別だ。
「あ、そうだ・・・」
Y氏は酒を飲んでいる途中、思い出したかのように箱を持ち出して蓋を開いた。箱の中には例の鉱石が詰められていた。
「それでは、これより、鉱石の配布を初めます」
「いいぞ!」
「待ってました!」
三人にとって、この瞬間が何よりも楽しみだった。目的の量はすでに確保している。これは、言うなら余り物だ。お互いに分け合って地球で換金すればいい。
均等に分けられるよう秤を使いたかったが、あいにく、宇宙船には秤など乗せられていない。あったとしても、それはパル星で採掘した鉱石の重さをトン単位で量るもので、手に持てる分だけの量を計量するには向いてなかった。仕方がなく目ばかりで、三等分にしてみた。ところが、この三人はお互いに少しでも多くの取り分を得ようと自分のところに少しばかり多くいくように鉱石をとった。
初めは冗談交じりで鉱石を分けていた三人であったが、次第にムードは険悪化した。人間というのは欲深く、ちょっとしたことで争いを始めてしまうものだ。三人はお互いに自分の取り分が少ないと言い争いを始めてしまう。そして、最悪の結果が起こってしまった。
「しまった・・・」
気付いた時は、手遅れだった。酒で酔っていたのもあったが、Y氏とX氏はZ氏を絞め殺してしまった。
何ということだ。鉱石を盗もうという些細な欲望が恐ろしい結果を招いてしまった。二人は慌ててZ氏の蘇生を試みたが生き返りそうにない。このまま、宇宙船に遺体を置いておく訳にもいかなかった。警察に調べられでもしたら殺人だと分かってしまう。二人はZ氏は事故で死んだことにして彼の遺体は宇宙船の外に捨てることにした。
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