序章

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雨竜(ウリュウ)私立 三ヶ峯(サガミネ)高校。 生徒数520人中、その約半数は著名人の息子や娘などが含まれている、地元では有名な進学校だ。 「いったい、何が起きてるんだ?!」 「き、救急車はまだ来ないのか!!」 慌ただしく校内を駆け巡る教育たち。 その校内、至るところが文字通り血の海になっている。 「発症した者たちは、全員、体育館に移動させているか?!」 「は、はい、体育館に集めて、外に出さないようにしています!」 明らかに異常な光景。 血に染まった校内。 冷静さを失なった人々。 そして、体育館に集められた大勢の生徒と、数人の教師。 「だ、出して、此処から出してよぉぉっ!!」 「たす、助けてくれ!!死にたくねぇよぉ!!」 施錠された体育館の扉を、内側から抉じ開けようと、100人以上の人々が観音扉に群がり、ある者は扉を叩き、またある者は、爪で引っ掻いているが無駄骨だった。 扉の外側は、抉じ開けられぬよう、ドアノブは鎖で巻かれ、折り畳み式の長机が4つ、扉の前に置かれているのだから。 「ゆ、ゆゆる、許してくれ、こ、これ以上、被害を拡大させる訳にはいかないんだ……」 「お、俺たちだって、死にたくないんだ……。す、すまない、すまないっ」 中から聞こえて来る救いを求める叫びを、扉の前にいた4人の教師は、耳を塞ぎ、許しを乞う。 「開けろよっ!!このままじゃ、死んじまう!!なぁ、そこにいるんだろ、先生っ!!」 「お願いだから、助けてぇ……。パパ、ママ、助けてぇっ!!」 怒声を上げる者、泣き叫ぶ者。 皆、この日の朝まで普通に暮らしていた者たち。 「もう駄目だ、死ぬんだ……。俺たちも、こいつらみたいにっ!!」 頭を抱え取り乱した中年教師の視線の先には、血だらけで倒れる教え子たち。
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