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その表情は苦悶に歪み、皆、白眼を剥いている。
「なんでよ、なんで、なんでアタシがこんな目にぃっ!!」
あまりに異常な光景に恐怖し、腰を抜かした女生徒の足元で絶命するのは、親友だった者。
身近な者の死が、少女の心を崩壊させる。
「あ、ぁぁ……っいや、もう、いゃああああぁぁっ!!助けて、助けてよぉぉっ!!」
泣き叫ぶ少女の口元は、吐血したのか赤く染まっていた。
そして次の瞬間、少女は大量の血を吐き、苦しみ悶え打つ。
「げほっ……た、すけ……。苦……し……、パパっ……」
リノリウムの床に倒れ、少しでも苦しみから逃げるように手を伸ばした少女。
だが、ぼやけていく視界に映るのは、同じように吐血し、苦しみながら死んでいく者たちの姿。
まさに体育館内は、地獄絵図だった。
「……皆、死ぬのね……」
阿鼻叫喚の中、独り冷静に腰を降ろした少女が1人。
血に染まった制服のスカートのポケットから携帯電話を取り出し、力の入らない指先で、目的の相手へ電話をかける。
そして、3コールも鳴らない内に出た相手の声に、少女は穏やかに微笑んだ。
「…………愛してくれて、ありがとう」
『ーー!!』
電話の相手が何かを叫んでいるけれど、もう少女には、その声は届かない。
「ずっと、愛してる……から、ね……」
そう告げ終わると同時に、少女の手から携帯電話が滑り落ちる。
カランと、虚しい音を立て床に転がった携帯電話からは、未だに呼び掛ける声が聞こえていた。
『ーっ!!ぃ、おい、返事しろ、茅尋っ!!茅尋!!』
通話中のまま途切れた携帯電話から、繰り返し呼ばれる少女の名。
『返事しろよ、茅尋っ!!』
だが、人形のように力を無くした少女の瞳には、もう何も映していない。
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