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朝食を済ませ、まだ時間に余裕があると、美久はダラダラと歯を磨いていた。
そんな息子を、やはり後ろから口喧しく、父親が急かす。
「美久、まだそんな格好してるのか。もう夏菜ちゃんが迎えに来るんじゃないのか?!」
「だかりゃ、わぁーてるって!!」
いい加減しつこい父親に、美久は歯磨き粉を飛ばしながら応える。
そこへ、来客を知らせる呼び鈴がなり、父親はほれみろと、ぼやきつつ、玄関へ向かう。
一方、この時間に訪れる来客が誰か解っている美久は、寝癖でボサボサの髪をかきあげると、歯みがきを終了し、スウェットをそのまま洗面所で脱ぐ。
そして、足元にある洗濯籠へ、脱いだスウェットを放り入れると、彼はパンツ一丁のまま、廊下に出た。
瞬間、おっとりした悲鳴が聞こえて来る。
「きゃあ!」
岩波家は、洗面所から玄関までが一直線で繋がっており、その為、玄関に立っている人間からは、洗面所から出て来た彼の姿は、嫌でも目に入ってしまう。
「よっくん、服着てない!」
「パンツははいてるわ!マッパで歩いてるみたいに言うな、夏菜!」
顔を真っ赤にした1人の少女の反応に、思わず美久が言い返す。
だが、そんな息子の頭を、再び父親が軽く小突く。
「だから、お前は女の子の前で、そんな格好でうろつくな。馬鹿たれ」
「良いじゃねーかよ。どうせ夏菜とは、小1くらいまでは、一緒に風呂に入ってたぐらいなんだから」
「そうゆう問題じゃないだろう。全く、図体ばっかでかくなって、中身はまだ子供じゃないか。夏菜ちゃんもゴメンな」
そう明るく謝る父親、そして若干、ふて腐れる美久。
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