あれはクリスマスイブ前夜

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世間ではまさにクリスマスムードという奴なのだろうか。 テレビでは『クリスマス』という単語が飛び交い、新聞に挟まっているチラシにはクリスマスケーキが宣伝されていた。 しかし、それは俺には関係ない事だ。いや、全く関係ないと言えば嘘になるだろうが。 可能な限りは関係したく無かった。 それを理由に、今宵は誰とも会わないように家でゴロゴロとしていた。 一人暮らしにしては高価なソファーベットで寛ぎつつ、テレビでバラエティ番組を横目に眺めていた。 と、いつからだろうか。携帯のバイブレーションが鳴っている事に気がつく。 『早く取れよ、お前に言ってるんだぞ』と言わんばかりだ。どうやらバイト先の女の子からメールが届いたようだ。 慣れた手つきで携帯を操り、メール画面を開く。 『クリスマス暇ですか?』 そんな内容が書かれていた。 「おお? 何か素晴らしい出来事が待っている予感がするんですけど !? 」 勿論だが、暇だ。バイト先の店長からは休みの許可を貰ったし、誰かと戯れる約束も無い。 取り敢えず俺は、正直に『暇だ』という事を伝えようとした。 『暇だけど、どうしたの?』と文字を打ち、送信ボタンを押す。 可能な限りクリスマスに関係したく無い、と言ったが撤回だ。バイト先の女の子と楽しい一時を過ごす事に決めた。心に決めた。 刹那、再びバイブレーションが手に伝わった。ワクワクの感情を胸に、条件反射的に携帯を操作してメール画面を開く。 直後、俺は目を見開いた。 『良かったー。天野君、お願いだけど明日のバイト、代わってくれない?』 前言撤回。 クリスマスに素晴らしい出来事なんてあるはずが無い。
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