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12月にしては肌寒い。部屋にいる時は、暖房を付けなければならないほどの寒さだった。
首に巻いてあるマフラーに唇全体を埋め、両手を服のポケットに入れて歩く。隙間から息をする。その都度、白い息が空中で溶けていった。
世間ではクリスマスイブ。街の大通りで、何度か若いカップルとすれ違った。内心、羨ましいなあとか思いながら目的地へと向かう。
目的地とは、とある喫茶店(としか説明できない)。俺は1年程前からそこで働いているのだが……。
そうこうしてる内に、目的地へと到着した。
ここのアルバイターは裏口から入るのが基本だから形振り構わずドアノブを握る。
そして、俺は店長がいるであろう休憩室へと向かう。まず最初に、朝の挨拶でもしておこうと思った訳だ。
「店長、おはよーっス」
「……え?」
『俺』の行動から先に話そうか。
休憩室を颯爽と通り抜け、隣の部屋である男子ロッカーに身を潜めた。
荷物を適当に放り投げ、取り敢えず椅子に座っている所である。冷静さを取り戻すために深い息を吐き出す。
さて、問題の『何があったのか』を話そうか。
結果を簡潔に話そう。女の子が休憩室で着替えをしていた。
「意味が分かんない」
何故だ。女子ロッカーという物を使わず、何故休憩室で着替えをしようと思ったのか。理解できなかった。
「それよりあれ、誰だ? 見たこと無い顔だったけど……まあ良いか。取り敢えず着替えよう」
後で会ったら謝ろうと考えつつ、自分専用のロッカーを開けた。
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