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店のユニフォームに着替え終えた俺は男子ロッカーの出口で考えていた。
今、扉を開けて、あの女の子がまだ着替えをしていたらどうしよう。
店長に連絡して助けて貰おうと考えたが、止めた。店長は男。俺の二の舞になりかねなかったからだ。
仕方無い。半ば諦めてながら扉を開けて飛び出したが、
「ん?」
休憩室は――誰もいなかった。怪訝な表情を浮かべるが、この現実は変わらない。
「おー天野良いところに。ちょっとこっちに来てくれー!」
「あ、おはようっス。店長」
その直後、やや中年のイケメン店長が俺の名前を呼んできた。
「それより店長。今ここで見知らぬ女の子が……!」
今の出来事を伝えようとするが、
「見知らぬ女の子? どこにそんなのいるんだよー?」
「いや、さっきまでここに(着替えをして)いたんですけど……」
と、店長は訝しい表情を浮かべた。
「お前さー。クリスマスイブに女の子とイチャイチャできないからって、何もそんな幻覚見なくても良いじゃん」
「いや、でも本当に……!」
「あー分かった分かった。からかって悪かったよ。話してやるから付いてきな」
何を分かって、何を話すのか気になったが、俺はしぶしぶ店長の後を追う事にした。
数段に積みあがった段ボール。眩しい天井の電光。誰もいないカウンターを一瞥し、ある部屋に辿り着いた。
「あっ……!」
辿り着いた途端、俺は咄嗟に声を洩らしていた。なぜなら、先程の女の子がバイトのユニフォームを装着して佇んでいたからである。
長い黒髪、整った顔。あまりにも可愛い女の子を――絶世の美女と呼ぶのだろう。まさしくそれだった。
少なくとも、この両目で捉えた女の子はそうだった。
「ん、どうした天野。もしかして大学で知り合いだったりするのか?」
「いえ、知り合いという訳じゃありませんが……」
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