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「異存はありません」
「うむ…」
「あの母親も身がなってなことをしましたね」
「そうじゃな 子殺しをしておけば済んだものを…」
子殺し…
「村長 子殺しとはなんでしょうか?」
「何?そうかお前はまだこの村に来て間もなかったな 教えてやろういいか…
この村の因習でな 一人目に出来た子供を殺す…というものがあるんじゃ その昔 一人目に出来た子を火事でなくしてしまった女がおってな 女は酷く悲しんだのじゃが、二人目に生まれてきた子供は大変優秀でな、その家は大変繁栄したという話がある。それ故、この村では一人目に出来た子供は殺すというのが習慣になっているのじゃ」
「なるほど よくわかりました」
「一人目に出来た子供のことは、世に居ずの子ということから『イズコ』と呼ばれているんじゃ この村の外れにイズコを祭る塚があるぞ」
「それでは なぜ…あの女は?」
「あの女の母親はな…子を殺さなかったのじゃ… 子殺しをしなかった この村に生まれ育ったものはこの因習から逃れることはできん 私たちはなんどもあの女を説得した…子殺せ子殺せとな」
ミサキの夢の中に出てきたのは
こ…殺せということではなく
子殺せという言葉なのだった
(子殺せ…それが私の夢にまで…)
「この村の宿命から逃れられん…あの女も子供を殺しておけばこんなことにはならなかったのだろうがな…子供を生かして自分を殺してしまうとはな」
「あの女をどうするでしょうか?」
「あの女の腹の中を殺す…それまでじゃ」
「そんな…」
「この村の因習に逆らうとどうなるか…それはあの娘が一番よく分かっておるじゃろ」
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