第3話

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用意していた夕食を2人で食べた。 久しぶりなのに、あまり会話は弾まなかった。 ソファに座った亮太は、やっと言った。 「澪・・・・話がある」 「はい・・・・」 少し離れて横に座ったのは、顔をまともに見なくてすむから。 「俺は・・・澪のこと・・・遊びじゃない・・・・って言ったよね」 「うん・・・・」 そうだね。何度も言ってくれた。本気だよって。 何度も何度も言って、抱き締めてくれた。 俺は本気だって。 「澪は・・・・信じてた・・・?」 笑みを含んだ声に思わず視線を上げると、いつもの優しい瞳がそこにあった。 「亮太・・・・」 「あんまり・・・信じてなかっただろ・・・・?」 「だって・・・・」 そんな言葉をまるっきり信じるほど私は、子供じゃないよ。 亮太は私を見つめたまま言った。 「俺・・・・・離婚する」 「・・・・・・え?」 「決めた。澪・・・・だからもう少し、待っててくれるか?」 あんまり驚くと言葉が出ないって本当なんだ。 私は思わず目を伏せた。 「澪・・・・?」 首を横に振る私を、亮太ははじめて不審に思ったみたいだ。 「そんなこと、しないで」 「澪・・・・?」 「翔吾くんからパパを取り上げるなんて、できないよ」 亮太は驚いた顔をして、でも何も言わなかった。 「今度のことでわかった。自分がしてたこと」 「澪」 「これは・・・・罰なんだって思ったの。だから、これで終わりにしなくちゃ・・・って」 「澪・・・・ちょっと待て」 「お願い・・・・・」 「待て・・・・って。そんなのお前の罪なんかじゃない。罰なら、受けるのは俺だ」 いつの間にか両手を捕まれていたけど、抱き締められると何も言えなくなるから、亮太の腕を振り払って立ち上がった。 「終わりにしよう、亮太」 「な・・・に・・・言ってる」 信じられないという顔をして、亮太も立ち上がった。 「お願い・・・帰って」 もう何も言えなくて、ただ涙を流していた。 亮太はじっと私を見て、寂しそうに笑った。 「最近・・・泣かせてばっかりだな」 黙って、首を横に振った。 「澪」 「ごめん、亮太」 「わかった・・・今日は帰る」 亮太は目をそらさずに言った。 「少し・・・時間を・・・おこう。俺も・・・・焦りすぎた」 亮太がドアを閉めてから、はじめて子供みたいに泣いた。 自分で言ったことなのに、悲しくて悲しくて、涙が止まらない。
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