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寒空の下で抱きしめあい、初雪にはしゃいでいた彼女を……。そして、わずかに積もった雪に文字を綴る彼女を。
そのときの楽しそうな顔が、そして俺をも愉しい気分にしてくれた顔が、今では俺を苦しめるために存在しているようだ。
二度と会えない人なんだ。忘れるべきなのかもしれない。
きれいに記憶から取り除くことができれば、どれほど楽だろうか。そんなことをおもう。
できないことと知りながら。
また一方で彼女の記憶をなくすまい、とする自分もいる。
彼女を思いだすごとに絶望を感じながらも、もはや未来に彼女はいないのだと知りながらも、たとえ失った苦しみのために自分すら失うとしても、彼女を思い描く自分がいた。
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