29歳

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「ちょっと、剛太っ」 そのまま鞄を抱えて帰ろうとする剛太に内心、優芽は焦った。 「頭、冷やせ。俺も冷やすっ」 ズカズカと歩いて剛太は、店を出ていった。 最近は、忙しくて中々会えないから。 時間を作って、やっと会えたのに。 こんなのって悲しすぎる。 優芽は、両手でじぶんの顔を覆って気持ちを落ち着かせた。 夢を叶えたいと仕事を辞めると決めた時も。 学校とバイトの掛け持ちの辛さに悩んだ時も。 今のお店に就職すると決めた時も。 いつだって話しを聞いて、背中を押してくれたのは、剛太だった。 「資格は持ってた方が良い。夢があるならなお良いぞ」 親の援助は受けないって決めてたから、専門学校が終わったら直ぐにバイト。 会える時間も少ないのに。 剛太は、いつも笑顔で支えてくれていた。
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