エリナ、瞬との夜空

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「瞬君、訊いてもいい?」 前置きできる冷静さは残っていたものの、それでも素面だったら質問できなかったと思う。 「なに?」 瞬君は飲んでいた水割のグラスをコースターに戻し、私に顔を向けた。 私は隣に座っている瞬君の方を見ず、カウンターに視線を落としたまま訊ねる。 「陸上を止めるとき、辛くなかった?」 「……辛かったよ。これから何のために生きるんだろう、って思ったときもあったし」 会話の内容は重いのに、瞬君の口調は穏やかで声は澄んでいる。
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