58人が本棚に入れています
本棚に追加
「そこまで思ったなら、どうやって立ち直ったの?」
質問に答える前に、瞬君は水割を飲んだ。
「立ち直った、って言えるのかな。自分でもよく分からないや」
「まだ引きずってる、ってこと?」
「怪我する前に戻って、もう一度レースを走りたいと思うことはあるよ」
「うん」
「でも、引きずってるって言うのとは、少し違うかな」
瞬君の言いたいことが分からなくて、私は小首を傾げる。
「10年近く経ってるからね。今は懐かしく思い出す感覚。昔みたいな苦しさや無念さ、心の痛みはないよ」
最初のコメントを投稿しよう!