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「おい、三宮! 聞いているのか!」
教師はつかつかとわざとらしく足音を立て憂に近付くものの、当の本人は気にした様子もない。再び手を動かすと、はらりと本のページをめくった。
その態度にさすがに堪忍袋の緒が切れたか、ついに教師は憂のイヤホンを外そうと手を伸ばす。
「三宮! いい加減にしろ!」
一層大きくなった怒号と共に憂の耳についていたイヤホンが吹き飛んだ。教師はそのまま畳み掛けるように啖呵を切る。
「まったくお前は! いつもいつも言っているだろうが! そんなことだからお前は……ぁ……」
だが、その言葉を最後まで口にすることはできなかった。何故なら――
「先生」
瞬間、空気が凍り付く。
「気分が悪いので保健室行ってきます」
――憂に威圧感たっぷりの言葉と共に、絶対零度の視線で射抜かれたから。
教師は――いや、クラスにいた全員が恐怖に固まってしまい動けない。その様子を見て満足気に微笑んだ憂は、教室のドアをあけ保健室があるはずがなかろう、屋上へと続く階段に向かっていった。
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