0人が本棚に入れています
本棚に追加
ふう、と煙草の煙をはくと、頭上に広がる青空が一瞬だけ隠れた。
遠くの方で、鐘が聞こえる。きっと入学式が始まったんだ。
もう一度煙草をくわえ、身体中に煙を吸い込んだ。
「わ!」
その、いきなりの背後からの声で、俺は噎せかえった。
振り向くと、綺麗なおかっぱ頭の金髪が真っ先に目に飛び込んできた。
咳が止まらず声が出せない。そんな俺のことを察したのか、はっと我に返ったのか、金髪は口を開いた。
「入学式に、出ようとしたら、トイレにいきたくなって…そして、いざ向かおうとしたらみんないなくて、はぐれちゃって…その…16歳にもなって恥ずかしいんだけど…」
「迷子?」
ずばり問うと、白いはだがみるみる赤く染まっていく。なるほど迷子か。
「ふーん、そっか。」
この学園は馬鹿みたいに広い。
校舎も広い。在席する生徒も馬鹿みたいに多い。
わりと有名な進学校らしく、設備は馬鹿みたいに整ってる。
通称、温室の鳥籠。
全寮制で中学、高校、大学へはエスカレーター式。
本当、頭が狂いそうになる。
*
最初のコメントを投稿しよう!