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少しの沈黙のあと、再び金髪は口を開いた。
「入学式に出ないと、入学資格取られるんだよ?!」
「いーよ、そんなもん。最初から要らないし。」
「でも…そんな…せっかく…。」
金髪の顔はみるみる暗くなり、俯いてしまった。
一人でいけば、と言おうとした瞬間に俺は気づいた。
こいつは迷子なんだ。
「あーもー、くそ。しょーがねーなー!ほら行くぞ。」
俺の入学資格が取られる分には全く問題ない。むしろありがたい。
だけど、悲劇的にも迷子になってしまったこの育ちの良さそうな金髪が、俺の見放しによりせっかくの入学資格が取られてしまうのは大問題だ。
煙草を靴の裏で消し、立ち上がると、金髪はぱっと顔をあげ、優しく微笑んだ。
「ありがとう!」
普段、感謝なんてされない俺はなんて言葉を返していいのか分からず、ふん、と鼻を鳴らしてしまった。
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