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小さな森の、道なき道を進む。
たまに振り返り、金髪がついてくるか確認すると、今にも泣きそうな、不安いっぱいな表情をあからさまに浮かべていた。
なにか声をかけようかと思ったけど、なんとなく躊躇ってしまって、開きかけた口を閉じた。
俺はこんな、小さな瞬間でも、なんて声をかけたらいいか分からない。
喉の奥がもやもやする。そんな煮え切らない雰囲気のまま、目的地の体育館へと到着した。
「君、すごいね!出鱈目に歩いてるのかと思ってた!」
後ろにいたはずの金髪が、安心しきった笑顔を浮かべて俺の目の前にいた。
「まさかよ。 」
ふ、と俺も思わず笑いが溢れた。
───体育館の中から僅かに、拍手が聞こえてきた。
金髪の顔がまたひきつる。
ああそうだ。中に入らないといけないんだ。
ここは丁度裏口だけれど、たぶん鍵が掛かってる。
もし仮に、掛かっていなかったとしても、ここで変に目立つのは勘弁だな…。
表の入り口には鍵が掛かってないはず…理事長のババアと来賓の人らが出入りするからだ。
「だいじょーぶ。こっち。」
よし。表から入ろう。
俺が歩き出すと、金髪も歩き出した。
いちいち表情が、ころころ変わるやつだ。
今は多分、この状況は、金髪にとっては危機的状況だろう。それも、明日からの未来にかかわる、とても重要な。
だけど、明日なんか期待しない俺は、ぼんやり、そんな呑気なことを考えていた。
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