第1話

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小さな森の、道なき道を進む。 たまに振り返り、金髪がついてくるか確認すると、今にも泣きそうな、不安いっぱいな表情をあからさまに浮かべていた。 なにか声をかけようかと思ったけど、なんとなく躊躇ってしまって、開きかけた口を閉じた。 俺はこんな、小さな瞬間でも、なんて声をかけたらいいか分からない。 喉の奥がもやもやする。そんな煮え切らない雰囲気のまま、目的地の体育館へと到着した。 「君、すごいね!出鱈目に歩いてるのかと思ってた!」 後ろにいたはずの金髪が、安心しきった笑顔を浮かべて俺の目の前にいた。 「まさかよ。 」 ふ、と俺も思わず笑いが溢れた。 ───体育館の中から僅かに、拍手が聞こえてきた。 金髪の顔がまたひきつる。 ああそうだ。中に入らないといけないんだ。 ここは丁度裏口だけれど、たぶん鍵が掛かってる。 もし仮に、掛かっていなかったとしても、ここで変に目立つのは勘弁だな…。 表の入り口には鍵が掛かってないはず…理事長のババアと来賓の人らが出入りするからだ。 「だいじょーぶ。こっち。」 よし。表から入ろう。 俺が歩き出すと、金髪も歩き出した。 いちいち表情が、ころころ変わるやつだ。 今は多分、この状況は、金髪にとっては危機的状況だろう。それも、明日からの未来にかかわる、とても重要な。 だけど、明日なんか期待しない俺は、ぼんやり、そんな呑気なことを考えていた。 *
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