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【第一線 潤いの町 フオラト】
<パン屋>という
表札を掲げた
木造建てのしがない
建物に大きな声が
響き渡る。
「だぁから!
そんなんだから
もう金がねぇんだろー!」
「うるさい!
しょーがねぇーだろ!
こっちはもう何ヵ月も
ろくなもん食べてねぇんだ!
もうパンの耳は
食べあきた!」
スキンヘッドで
体格のよい色黒な男が
少年に罵声をあびせたと
思いきや
少年も負けずと大声を出した。
どうやら彼らは
このパン屋の常連のようで
店内に2つしかない
4人がけのテーブル席のうち
1つを陣どっていた。
「こりゃ将来、
ソラもギャンブラーだな!」
「こら、ギン!面白がるな!」
ギンと呼ばれる
細身の男は
その場を楽しんでいるようだ。
手入れのされていない
ブロンド色の髪の毛は
あちらこちらに
跳ねており
まるで
だらしのない性格
そのものを
現しているようだった。
「カイトはいつも
ケチケチけちけちして
男らしくないよ!」
少年はふてくされているようだ。
「だとよ、カイト」
「ギン…
お前は少し黙っていろ。」
カイトと呼ばれる
スキンヘッドの男は
腕を組み
真っ直ぐな視線を
ソラへと向けた。
「いいか。ソラ。
これは遊びじゃないんだ。
小6だったお前には
過酷な現実かもしれないが
俺の言うことを聞け。
アライブとして
生き残るには
ケチケチしても
足りないくらいなんだ。
どんなことも
たえて生き残る。
俺たち3人で
協力して、だ。」
「へっ
足りないだろうから
俺がなんとか
増やそうとしてやったんだろ!」
落ちついたトーンで
話すカイトの言葉には
重みがあったが
ソラには伝わりきって
いないようだった。
しかし
カイトが怒るもの当然だ。
チーム3人で
僅かな報酬のクエストにて
着々と貯蓄していた
マネーのほとんどを
ソラが使ってしまったのだから。
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