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第1話 白銀の白虎
ゲームが始まってから
1ヶ月が経過していた。
ウイルスは未だに破壊されず
プレイヤーはログアウト出来ずにいた。
第一線 【潤いの町 フオラト】
はじまりの町 ウエルシアから
隣に少し歩いた所に位置する町。
大きな樹木が立ち並ぶ町の床は
真っ白なコンクリートで整備され
緑と白の何とも神秘的な町並みである。
だがフオラトは栄えた町ではないし
建築物は二階の木造ばかりである。
その建築物の路地裏が
今日はやけに騒がしい。
3人の大男が
倒れている無精髭の男を囲い
罵声を浴びせながら
踏みつけるように蹴り続ける。
せっかく朝早くセットした
薄茶色の逆立て髪も
これじゃグチャグチャだ。
少し離れたところで
それを眺めている女が1人いる。
無精髭の男は両手で
頭を守りながら左上に視線を送る。
命の残量を表すHPの帯が
オレンジ色から赤色に色を変える。
その帯の上には
【Y's】と書かれている。
「く…ちょ…待て…話を聞け!話を!」
ワイズの顔はもはや原形を失うほどに
腫れていて鼻血が溢れ出る。
一見、間抜け面の様ではあるが
その傷は痛々しい。
大男達は顔を見合せ、足を止める。
「何だよ話って…やっとお前のー」
「俺はまだレベル3だ!!」
堂々たる態度でワイズが大声で言う。
さきほどまで頭を抱えながら
やられていた男とは思えないほどに。
「…………はぁ?」
が意味がよくわからない。
「お前らは、いくつだー?」
ワイズは膝に手を当てながら
起き上がると
3人に順番に指を指す。
「は、8だ…」「8…」「7だ。」
傷だらけの顔が迫力を
かもちだしている。
「そんなレベルになって…
なにやってんだ!
相手はレベル3!レベル3だぞ?!
3歳児みたいなもんじねーか!
可哀想だ、守ってやりたい…!
普通そー思うだろーが!!」
「…………」
クスッ
という音が響いたが
その音の犯人は
傍観している女に違いない。
他の大男達のヘイトが上昇したのは
顔を見れば分かる。
ワイズは思わず
スキル、【挑発】を使用。
路地裏が更に騒がしくなった。
「やべ…痛ぇし…死ぬ……」
ワイズがなぜ大男3人と女1人に
襲われているかというと
1時間ほど前に話はさかのぼる。
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