プロローグ

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ーーー きゃんきゃん騒々しさと引っ張られる腕の痛みに、泣きたくなった。 さらに両方向から6人に腕で綱引きされそうになって、恐怖が襲う。 「みんなやめなさい」 園長先生の声が響く。 怯んだ女の子達が、腕を放した隙に、先生のもとに逃げ込む。 おままごとする度に、女の子達のケンカに巻き込まれる。 どうしてなのかな。 僕を無視してざわざわする周りの声に、悲しくなって下を向くと、名前を呼ばれた。 顔を上げると、いつの間にか集まっていた人垣が左右に割れる。 「聖(サトシ)のおよめさん、僕ら」 満面の微笑みで天使が二人、僕に駆け寄って来る。 左右から抱きつかれても、この二人は痛くないように、優しくギュとしてくる。 小さい方の天使がくりっとした瞳で見上げて来るから、ふわふわした色素の薄い髪を撫でてやった。 「僕らよりも可愛くて優しくなきゃ、聖のおよめさんにしてあげなーい」 大きい方の天使がイタズラっぽく声を上げると、途端に女の子達が静かになった。 それは無理だ。僕にもわかる。 二人よりも可愛く思う子も、優しいと思う子もいないもの。 「それじゃぁ、ずっと巽(タツミ)くんと諒(マコト)くんがおよめさんだね」 「そうだね」 遠巻きに見つめていた、男の子たちが呟く。 幼稚園児にして、彼女達は一瞬で敗北を悟った様で、何も言ってこない。 「ずっとね」 大きい方の天使、巽がにっこり笑う。 「だいすき」 小さい方の天使、諒も笑窪を作って る。 「僕もだいすき」 二人を抱きしめて囁いた。 あぁ、本当に可愛いな。 僕の弟達は。
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