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中等部の寮監さんはね。
皆に平等に優しくて、頼れるお兄さんだ。俺も嫌いじゃない。
ちゃんと大人だから、中学生にどうこうする様なことはない。
これっぽっちも、不適切なことはしない。
それでも好意のある相手については興味がある。
周りには、そんなこと気がつかせない様に気をつけてるつもりだろうけど、結構態度に出る。
人間だもの。
目は口ほどにって、言うよね。
それなのに、なんで気がつかないの。柊人くん。
それで、なんで気がついたんだろう。俺は。
思い出せないけど。
でも、そうなんだよ。
あの人、俺を通して柊人を見てるって、いつだか解った。
俺には興味ないんだって。
だから、俺が何をどうしたかを聞きたいんじゃなくて、柊人と俺が何をどうしたかが知りたかったんだよ。
「柊人のあーほ」
この呟きは、柊人に届いて無かったのでそのまま消える。
あー、やだやだ。
柊人なんかの事で、思考が一杯になるとか、ホント馬鹿らしいから、考えるのやめよ。
柊人が勘違いに気がつかないまま、高等部寮に向かって黙々と自転車を進める。
自転車って便利ねー。
滅多に乗らないから、徒歩で十数分かかる距離が、あっという間に過ぎて行く様に感心してしまった。
多分、この学園の生徒のほとんどが乗れなそう。乗ろうと思ったことも無いんじゃないだろうか。
振り返ると中等部寮が、ぐんぐん離れて行く。
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