4月@それで高等部寮へ入寮

5/17
159人が本棚に入れています
本棚に追加
/107ページ
自問自答して居る間に、数棟並んだ高層の建物の前に到着した。 マンションの様な、ホテルの様な。中等部寮より格段に規模も大きく、高級だ。 俺が降り易い様に、遊歩道沿いの花壇のレンガが丁度足元に来るから、そこに足を伸ばして、さっさと柊人の背中から離れた。 自転車から降りた柊人がどんどん進んで行くので、とりあえず後ろをついて行く。 自転車も一緒に建物の中に入ると、広いエントランスで、壁際に椅子や自販機、大量の郵便受けがあった。 硝子扉の前に着くと、柊人のキーで認証をパスして扉のキーがガチャっと開く。 駅の改札をICカードで開く様な感じで、扉の横にある読み取り部分にかざすだけだ。 へー、簡単。これが住人以外入れないって言ってたヤツか。 柊人の代わりに、硝子扉を押し開けると、エレベーターと、その横のベンチに座った人が目に入った。 俺たちに気がつくと、手にしていた携帯電話をしまって立ち上がる。 「おかえりー」 鹿島先輩だった。 「自転車、ありがとうございました」 柊人が押して来た自転車を差し出すと、「そっちに停めて置いて」と少し向こうの扉を指す。 扉からして、住居っぽい。 柊人がそこに自転車を移動させる間、様子を見ていた俺に鹿島先輩が話しかけてくる。 「あそこが、寮長の部屋。君なら、いつでも歓迎するから、訪ねて来てね」 そう言えば、この人が寮長だった。 人懐っこく笑う顔は整っていて、俺より頭一つ分ぐらい高い位置にある。 柊人よりも背が高い。 説明会の時に少しだけ見たけど、ヘラヘラして居なければキリッとしていて凛々しい。素直に良い男の部類だと認められる。 「はい」と、返事をして頷くと、ニコニコした鹿島先輩も頷きを返して来る。 「困った事が有れば、インターホン鳴らすか、それか電話で知らせてくれて良いよ」 言いながら、携帯電話を操作して、画面を見せてくる。 表示された鹿島先輩の電話番号に、違和感なく自分の携帯電話を取り出していた。 番号を入力し、発信する前に、ふと冷静になる。 あれ? もしかして、これって。
/107ページ

最初のコメントを投稿しよう!