さくら、その下で

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妹は自分で煎れたお茶を飲みました。わたしの湯飲みにも煎れてくれましたが、わたしには、お茶を飲むような余裕はありませんでした。 「なんでも、そのお母さまは所謂……遊び女っていうのかしら。とても綺麗な方なのよ。でも、ほら、そういう人の子どもって、嫌われるじゃない。それにお父さまも、ねぇ……」 「その子には、兄はいたかい」 「えぇ。でも、お兄さまは日本人との子どもだったとか。あぁでも……処刑されたんですって」 「処刑?」 「スパイだったという噂よ。お母さまもそれで処刑されたんですって。その子は、疎開してたから無事らしいわ。見た目は日本人そのものだから、なんとか誤魔化していたみたい。……どうしてちぃ兄さま、こんなこと聞くの?」 「いや、別に。……深い意味はないんだ」 そう言いながら立ち上がり、外套を羽織ったわたしを、妹は訝しげに見ました。
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