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「……」
わたしは、黙りこくりました。イタリアの本は、偶々持っていただけでしたし、そんなことを何故。見ず知らずの、会ってばかりの人に責められなくてはならないのか、欠片も解りませんでした。
彼女は、淡々と聞いてきました。
「貴方は。日本が好きでしたか」
「いいえ。ちっとも、好きではありません」
そう返すと、彼女は深く笑みました。わたしに小説を手渡すと、深々と頭を下げました。
「唐突に質問なんぞをした、無礼をお許しくださいませ。しかし、一つ。言わせてくださいませんか」
「はぁ……」
「あたくしは、日本が大嫌いです。憎くて、憎くて。しょうがないのです」
何故、彼女があのような事を、わたしに言ったのか。皆目見当がつきません。ただ単に、敵国の小説を読んでいたからなのか。わたしになにか、感ずるものがあったのか。いやしかし、わたしは平々凡々な学生でありました。
予測ばかりが勝手に独り歩きしました。
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