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恥ずかしいから、とりあえず店を出よう。
そう言ってファミレスを出たものの、目的地もなくぶらぶらする。
「あっ、麻琴あそこ行こうよ」
かんなの指差した先には――
「大学?もっといいところじゃなくていいのか?」
「いいよ、だってここで良い思い出作ってないでしょ。それに雰囲気に流されなくて済むじゃない」
記憶の中の彼女はこんなに自己主張がなかった気がする。
変わったのか、自分が押さえつけていたのか。麻琴は罪悪感を感じた。
「ねぇ麻琴、なんであの時私の書類を本当に破かなかったの?」
「出来る訳ねぇだろ。鞄の中漁った人間が言うことじゃねぇけど、相手が本当に大事にしてるもんは奪えねぇだろ。
でもフリならいいって訳じゃねぇよな。お前の事、死にたくなるほど追い詰めて、嘘じゃすまねぇっての…」
そう言って目線を下げる麻琴を見て、変わったなと思うかんな。
それともこんな麻琴も彼の一部なのだろうか。自分といる時は弱い部分を出せなかったのか…?だとすれば申し訳なかった、と思うかんなだった。
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