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「ねぇ、麻琴。
私たちの出会いは運命で、必要なものだったのよ。結末はハッピーエンドじゃなかったけど、お互いの大切な糧になったでしょ。
だから、もう少しの間でいいから忘れないで…」
麻琴は、先を歩くかんなが振り向かずに精一杯元気なフリをしている事に気づいていた。けれど空元気でも最後の言葉が震えている事は誤魔化せない。
麻琴は胸が痛んだが、元気を装うかんなの気持ちに甘えて、震えに気づかないフリをした。
「ずっと忘れねぇに決まってんだろ。
よし帰るぞ、後ろ乗れ」
いつの間にか駐車場に着いていた。麻琴は愛車のバイクを大学に停めたまま待ち合わせ場所に向かったのだ。
複雑な思いでバイクを見つめたまま動かないかんなに予備のヘルメットを手渡す。
「ま、乗れって。今後こんな機会もそうそうないかもしんねーからな。
…無理強いはしねぇけど」
‘無理強いはしない’ヘルメットを手に乗せる前のセリフでは?思わず笑顔になってヘルメットを被り、麻琴の後ろに股がった。
確かにこんな機会は、この先そうそうないかも知れない。
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