第12章

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走り去る雫の後ろ姿を見て、笑みが溢れる麻琴。 月下に謝れ、か。 雫が望むなら何でもしてやりたいのは山々だ。だけど月下に謝るのだけはできそうもなかった。 あの時かんなの鞄から出てきた生徒手帳には、間違いなく“森崎月下”とあった―― ◇◇◇◇◇ 「森崎君?」 すれ違った背の高いイケメンは怪訝な顔で振り返った。 「森崎彪くん?覚えてないかな。 …覚えてないよね、ゴメンね。 でもどうしても一言言いたくて。 あなたに背中を押してもらって、自分で決めて選んだ人生を歩んでます。あの時はどうもありがとう」 一方的にそれだけ言い会釈して、踵を返した。 「おねーさん」 あの夜と同じ呼び方に、かんながビクリとして立ち止まると 「あなたの翼で翔んで、悔いのない人生を。あなたなら、きっとできる」 かんなが驚いて振り向くと、既に背中は遠ざかっていた。 「ありがとう、森崎君」 かんなは笑顔で歩き出した。 かんなに背を向け歩き出し、廊下の門を曲がったところで仲間に声を掛けられた。 「森崎、探したぞ」 「何か用か?」 「森崎、今日の飲み会来るよな?俺たちの為に来てくれるよな?!」 「気が乗らねぇ…」 「頼むって!お前が来ないと女子に“月下くん来ないのぉ?”って言われんだよ!」 「わかったって、ちょっと顔だして帰るからな」苦笑して了承した。
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