第13章

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麻琴の研究室を目指してひんやりとした廊下を進む。 研究室にいなかったらどうしよう…? コンコン、ガチャッ! いつもならノックの後で返事も待たずに性急にドアを開けたりはしない。 「わかった、切るぞ。あぁ、本人…」ピッ 誰かと電話していた麻琴は私を見て会話を切り上げた。 「雫どうした?そんなに急いで、俺に会いに来たか?」 そういいながら歩み寄って来て、私の背中に手を回した。部屋を出るよう背中を押して私を誘導する。 手っ取り早く書庫のドアの鍵を開けると、そこに入るよう促した。 似たようなシチュエーションなのに、以前空き教室でキスされた時の怖さは感じない。 なぜなら麻琴の表情は、子供に答え難い質問をされた親のようだったから。
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