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「で、どうしたんだ?」
資料山積みの机の上に腰掛けて、足元を見たままの麻琴。いつもと違って全然こっちを見ない。やっぱり知ってるんだ…
『麻琴、どうして月下を恨んでいたの?どうして月下が相手だと思ったの――?』
「何でだったかな…かんなが言ってた名前を覚えていた…」『嘘!かんなさんは彪って言ってた!』
「彪…だったか?覚えてない」麻琴は苦しげに目を閉じてしまった。
デスクにぶつかりながら麻琴の傍に行って両腕にすがりつく。ぶつかったデスクからはバランスを崩した資料の山がドサドサと落ちた。
『教えて。本当の事が知りたいのっ!』
麻琴がふぅ、とため息を吐いた。
『麻琴…っ!』
「…生徒手帳の名前。表紙を開いたところに印字された生徒の名前が森崎月下だった。
かんなは内側の名前も見ずに拾っただけかもしれない」
それを確かめに来たのに、実際に言われるとショックが大きい。
『でも、でも…逆かもしれない。彪が月下の生徒手帳を落としたのかも…』
麻琴は閉じていた目をゆっくり開けると私の頭を優しく撫でた。
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