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身支度して玄関を出ると、彪が電柱に寄りかかって待っていた。
『おっはよ、お待たせ』
「おせぇよ!ったく」
『こらぁ‘おはよー’でしょ。朝なんだから挨拶が先でしょう、もー』
電柱に凭れてスカシてる彪の背中をバシバシ叩く。
「ってぇ!挨拶しろとか、叩くとかウチのババアか。
ホレ行くぞ。
――離れて歩けよ」
だったら待ってなきゃいいのに。
昨日麻琴に送ってもらって帰宅した後で目元を冷やしたとはいえ、長い付き合いの彪には散々泣いた後だとバレているようだ。それなのに何も聞いてこないのは、興味が無いって事なんだろうか。
なんとなく無言でいるうちに駅に着いてしまった。
くるりと振り向いた彪が
「雫、具合悪くなったら無理しないで直ぐに言えよ」
ん、と言って右手を出した。
?何?
躊躇っていると私の左手を取って何かを握らせる。
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