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「だから紗枝、
伊吹先生に言ってやって。
俺の復帰を待たなくていいから
今すぐにでも移植を
受けてくれって。
俺は大丈夫。
必ず復帰出来るんだし
復帰せざるを得ないんだ。
亜希が高校を卒業するまでは
何があっても
くたばれないからね」
そう言って孝之はフッと
笑うと私の唇から
指を離して行った。
「…孝之…」
彼の名前を呟いたと同時に
孝之は静かに目を閉じ
最後の言葉を私に告げた。
「俺が退院するまでに
紗枝は引っ越ししておいて。
復帰したらあの家は
引き払うから。
それと紗枝の引っ越し費用は
貯金から使っていいから。
慰謝料とかそういうのは
お互いなしでいいよね」
…もう何も言えなかった。
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