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孝之が亜希ちゃんとの
同居を選ぶのであれば
私はその場所にはいられない。
まだ中学生の亜希ちゃんまでが
私と孝之の現実を知っていると
いう事ならば尚更、だ。
「…わかった…。
近いうちに引っ越しするね」
ポツリと呟いた私に
孝之は何も答えてくれなかった。
彼の着替えを詰めた袋を手に
私は静かに病室を出る。
ドアの横の壁に背中を預けて
その場にズルズルと座り込み
天井を見上げた。
10年間も一緒に生きて来たのに
こんなにもあっけなく
お互いの心が離れて
しまう現実が無性に悲しい。
私が聖と出会わなかったら
私と孝之はいったいどうなって
いたんだろう。
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